Web音遊人(みゅーじん)

緑豊かな古都のホールで上質なクラシックのコンサートに耳を傾ける

京都のクラシックシーンを牽引する京都コンサートホールは、京都府立植物園に隣接する緑豊かな場所に位置する。地下鉄烏丸線北山駅から徒歩数分の距離で、1995年にクラシック専用のホールとして竣工した。パイプオルガンを有する大ホールと、室内楽用のアンサンブルホールムラタで構成され、いずれも上質な音響を誇っている。

京都コンサートホール外観

2020年、京都コンサートホールは開館25周年を迎え、この年はベートーヴェン生誕250年も重なり、「特別な1年」を迎えるべく多種多様なコンサートやイヴェントを準備していた。しかし、コロナ禍により多くが中止や延期となってしまった。そのなかで迎えた2021年、同ホールは再び新たな気持ちでさまざまな企画を予定している。

3月19日にはアンサンブルホールムラタにおいて、「2021年度自主事業ラインナップ」の記者発表が行われた。当日の登壇者は京都市交響楽団常任指揮者兼芸術顧問、京都コンサートホール館長の広上淳一と同ホールプロデューサーの高野裕子。「いまこそ、音楽の力を」という今年のコンセプトのもと、3つのコンセプトを主軸にした企画が発表された。

アンサンブルホールムラタ

1900年代初期から中期にかけて世界はスペイン風邪に見舞われ、多くの犠牲者が出た。第一次世界大戦やロシア革命も起こり、大変な状況を迎えていた。そのなかで人々の暗澹たる思いを払拭すべく、多くの作曲家が力強く革新性に満ちた作品を編み出した。今回はその時代の音楽を中心にプログラムが構成されている。開催から25周年を迎える「京都の秋 音楽祭」は9月12日に開幕。没後100年を迎えるサン=サーンスの交響曲第3番『オルガン付き』を取り上げ、国内最大級のオルガンの音色を披露する。このオルガンの響きをより多くの人々に楽しんでもらうため、「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」も企画され、一般市民合計200名(1公演100名×2公演)を招待する。「世界の響きを京都から」と銘打ったコンサートは、国内外のアーティストによるショパンや没後50年を迎えるストラヴィンスキーの作品が組まれている。10月16日には広上淳一が音大や芸大生など7校から選抜された学生とともにストラヴィンスキーの『兵士の物語』を演奏。朗読は京都在住の狂言師、茂山あきらが担当する。第2のテーマに掲げる「京都でしか聴くことのできない音楽を発信する」と熱く語る様子がこの人選からも伺える。

これは第3のテーマ「若手音楽家や学生を起用し、新しい人材を紹介していく」ことにもつながる。いま、京都市交響楽団は高い評価を得ているが、そのメンバーが実際に指導に当たっている京都市ジュニアオーケストラもレヴェルが向上しているという。こうした演奏家による練られた上質で魅力的なラインナップを備えたスケジュールは、2021年4月から2022年3月まで組まれている。

広上館長は「2008年度から京都市交響楽団の指揮を務め、世界に通じるオーケストラを目指してきました。その本拠地である当ホールは学術都市―京都の中心であり、人々が自然に集まる場所にしたい」といい、高野プロデューサーも「コロナを乗り越え、一筋の希望の光となる音楽をお届けしたい」と語る。

京都コンサートホール館長・広上淳一(写真左)、京都コンサートホールプロデューサー・高野裕子(写真右)

京都コンサートホール >

伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー

特集

LEO

今月の音遊人

今月の音遊人:LEOさん「音楽とは、言葉以上のメッセージを伝えられるものであり、喜びの原点です」

2733views

“ビートルズ嫌い”という思い込みを正すきっかけをつくってくれたジャズ・カヴァーという“遺産”

音楽ライターの眼

“ビートルズ嫌い”という思い込みを正すきっかけをつくってくれたジャズ・カヴァーという“遺産”

37327views

トランスアコースティックピアノ™

楽器探訪 Anothertake

音量の問題を解決し、ピアノの楽しみを広げる「トランスアコースティックピアノ」

5220views

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法 - Web音遊人

楽器のあれこれQ&A

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法

16951views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

11073views

誰でも自由に叩けて、皆と一緒に楽しめるのがドラムサークルの良さ/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

オトノ仕事人

リズムに乗せ人々を笑顔に導く/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

7517views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

7781views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

15629views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

21008views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

11743views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

5759views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32949views

大人の楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:バイオリニスト岡部磨知がエレキギターを体験レッスン

20531views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

15981views

音楽ライターの眼

フラメンコ・プログレを代表するカルメンの3作品が2020年リマスター&紙ジャケット仕様CDで復刻

5831views

カッティング・エンジニア

オトノ仕事人

レコードの生命線である音溝を刻む専門家/カッティング・エンジニアの仕事

6285views

われら音遊人

われら音遊人:オリジナルは30曲以上 大人に向けて奏でるフォークロックバンド

5029views

楽器探訪 Anothertake

ナチュラルな響きと多彩な機能で電子ドラムの可能性を広げる、新たなフラッグシップモデルDTX10/DTX8シリーズ

5221views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

15145views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

6611views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

553views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6717views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

32949views

OSZAR »