Web音遊人(みゅーじん)

甲田まひる

目標はバド・パウエル完全制覇!?17歳の新星ジャズ・ピアニストのデビューアルバム『PLANKTON』/甲田まひるインタビュー

人気のファッショニスタであり、新星ジャズ・ピアニストとして脚光を浴びる甲田まひる。2018年5月にはデビューアルバム『PLANKTON』をリリースし、ジャズ界に新たな風を吹き込んだ。弱冠17歳にして開花させた豊かな才能、そして17歳だからこその自由でみずみずしい感性が輝きを放つ。

5歳のとき、音楽教室で習い始めたピアノ。右手と左手が違う動きをするのが楽しくて夢中になった。そんな少女は、小学生になるとジャズの響きに魅せられるようになる。
「湯山昭さんの曲をよく弾いていたのですが、中でもジャズっぽい曲が好きでしたね。音楽教室の先生が、クラシックをジャズやラテン風にアレンジしてくれた曲も好きで、響きがかっこいいのとノリがいいところに直観的に惹かれました」
クラシックと並行しつつ、ジャズの勉強は独学でスタート。名盤と呼ばれるCDを母親に片っ端から借りてきてもらい、聴きまくった。ジャズ・ピアニストになりたいという甲田の将来の夢が決まるのは、バド・パウエルとセロニアス・モンクという、圧倒的な個性をもつふたりのアーティストのビバップ(1940年代に生まれたジャズ演奏のスタイル。複雑なコード進行を目まぐるしいスピードで演奏する)に出会ったときだ。
「他のジャズ・ピアニストとは音がまったく違って。本当に衝撃を受けました。本格的にジャズをやりたいと思うようになりましたね」
そこで甲田が始めたのが耳コピして楽譜を書き、真似して演奏すること。憧れのジャズ・ピアニストの音を、彼女は耳と体で吸収していった。
「楽譜を見てただ弾くのと、何回も耳で聴いてから弾くのとでは体への染み込み方が違います。今も耳コピが大好きで、至福の時間。いろいろなジャズを聴くんですけれど、結局はバドに戻っちゃいますね。いつ聴いても自分にとっては一番。最初に出会ったときの衝撃は、今もまったく一緒です。自分のルーツであるバドを耳コピで制覇したいです」
耳コピをしていると、楽譜には起こせない細部まで音を追いかけることになる。だから、バドがすぐそばにいるような気持ちになるのだそう。

甲田まひる

一方で甲田は、世界中に15万人のフォロワーをもつファッショニスタであり、モデルとしても活躍。インスタグラムを始めたのは、小学6年生のときだったという。
「とにかくファッションが好きで『今日のコーデ』みたいなのを載せ始めたんです」
母親の影響で古着好き。キュートなルックスと独自のセンスから“おしゃれすぎる中学生”として注目を集め、東京コレクションに招待されたことも。
「ファッションは表現方法のひとつ。だって、外見でその人の人柄や何が好きなのかといった個性を出せるところは、そんなに多くないですよね。ジャズに出会ってからは、ファッションと音楽の両方で自分を表現したいと思うようになりました。ステージに立つときもファッションがかわいくないとテンションが上がらないので、服でコントロールしている部分もあります。見ている方も楽しい方がいいと思うし」

そんな甲田が「そのときの自分にできること、やりたいことを全部詰め込みたい」と挑んだのが、デビューアルバム『PLANKTON』だ。ドラムにジャズ界期待の新星・石若駿、ベースにKing Gnuの荒井和輝を迎え、ビバップを中心に構成。「クレオパトラの夢」「ルビー・マイ・ディア」「ウン・ポコ・ローコ」などバド・パウエルやセロニアス・モンクの名曲を圧倒的な個性をもって蘇らせているほか、オリジナル曲2曲も収録されている。
「ビバップは好きだし、ファーストアルバムでそのビバップをきちんと残すのは大事なことだと思ったのですが、オリジナル曲をやりたいという思いも強かったです。そのときはヒップホップも好きだったし、新しいジャズなど他のことにも挑戦していたので、それをオリジナル曲に取り入れました」
ファッションを楽しむように──。若い人にももっとジャズを聴いてほしいと甲田は考えている。その思いを形にしたのがジャズとヒップホップを融合した今回のオリジナル曲であり、石若、荒井という若いメンバーによる音づくりだ。さらに、「視覚的にもファッショナブルなものにしたい」とフリーダ・カーロを意識したアルバム・ジャケットにもこだわった。
「プレイバックは好きじゃないのですが、自分でも聴けるアルバムに仕上がったと思います(笑)。お母さんは何回聴いても飽きないと言ってくれて。ジャズを知らない人やヒップホップしかやらない子たちも褒めてくれるので嬉しいです」
ジャズファンはもちろん、ジャズに馴染みがない若いリスナーも、ぜひ彼女ならではの表現を体感してほしい。

甲田まひる/マッピー〔こうだ・まひる〕
2001 年生まれ。ファッショニスタ、ジャズピアニスト。
小学校6年生の時に始めたインスタグラムをきっかけにファッションスナップサイトでブロガーデビュー。同じころさまざまな雑誌のストリートスナップにも登場。ファッションアイコンとして業界の注目を集め、東京コレクションのフロントロウに招待される。以降、ファッション誌の連載やモデルとしても活躍。2017 年から都内のライブハウスを中心にジャズピアニストとしての活動を開始。2018 年5月にアルバム『PLANKTON』でメジャーデビュー。
オフィシャルサイト:http://mahirucoda.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/bopmappy/

■ アルバムインフォメーション

『PLANKTON』
PLANKTON
発売元:ソニー・ミュージックダイレクト
発売日:2018年5月23日
料金:2,500円(税抜)
詳細はこちら

 

特集

LEO

今月の音遊人

今月の音遊人:LEOさん「音楽とは、言葉以上のメッセージを伝えられるものであり、喜びの原点です」

2733views

音楽ライターの眼

ベートーヴェンの生誕250年に、3大ピアノ・ソナタを極める

44781views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

ピアノのエレガントなフォルムを大切にしたデザイン

7715views

CLP-825WH

楽器のあれこれQ&A

はじめての電子ピアノを選ぶポイントや練習を続けるコツ

4211views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

18601views

松石陽介さん

オトノ仕事人

「音楽の輪・人の和」を大切にして、子どもたちを健やかに育てる/地域バンドをまとめる仕事

940views

荘銀タクト鶴岡

ホール自慢を聞きましょう

ステージと客席の一体感と、自然で明快な音が味わえるホール/荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館)

13132views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3705views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12747views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8884views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

いまやサクソフォンは趣味となったが、最初は映画音楽だった

7202views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

27146views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

13638views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

12747views

クラシック名曲 ポップにシン・発見(Phase6)

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase6)ロドリーゴ「アランフエス協奏曲」、マイルス・デイヴィスにはないスペインの明るさ

1856views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

7410views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

6366views

楽器探訪 Anothertake

おしゃれで弾きやすい!新感覚のアコースティックギター「STORIA」

51266views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

20607views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6427views

FGDPシリーズ

楽器のあれこれQ&A

新たな可能性を秘めた楽器、フィンガードラムパッドに注目!

554views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7416views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11035views

OSZAR »